正しく見るために
実用調節明視域
2026.04.22

眼の水晶体によりピントを合わす力を調節力、その調節力を使って見ることのできる最も近い距離を近点、全く調節力を使わない状態で元々のピントの合ってる最も遠い距離を遠点と言い、遠点から近点までを明視域と言います。
メガネを掛けた時の明視域が、実際の生活の中で見たい距離と合っていればピントが合いますが、長時間その距離を見続けた時に疲れないかどうかはまた別の問題です。
以前のコラム「目的距離を考慮した眼鏡で視生活をもっと楽に快適に」と「年齢とともに遠くなる近点」でも触れていますが、一般的には調節力に負荷をかけずに近くを見ることのできるのは、調節力の半分くらいを使って見ることのできる距離と言われています。

このグラフは30代後半の調節力が4.50Dまで低下した弱度の近視(S-0.25D)の明視域。
緑色(眼前40cm〜62cm)は調節力の50%(2.25D)以下でピントの合う距離で、青色(眼前63cm〜400cm)は調節力の30%(1.35D)以下でピントの合う距離となります。
黄色(眼前29cm〜39cm)はピントを合わすのに、調節力の50%(2.25D)以上が必要で、赤色の距離(眼前21cm〜28cm)は調節力の70%(3.15D)以上が必要となり、眼の調節力に負荷をかけて見える距離となります。
このグラフでは、極めて弱度の近視(S-0.25D)なので遠点は眼前400cmで裸眼での視力は1.0と、遠くは不自由なく見えていて遠くを見るのにはメガネは必要ないでしょう。
調節力の50%でピントの合う距離は眼前40cmとなり、パソコンなどは調節力に負荷をかけずに見ることができます。
眼前40cmよりも近い距離にピントを合わすには調節力の50%以上が必要で、眼前29cmよりも近い距離にピントを合わすには調節力の70%以上が必要となるので、非常に眼に負荷のかかる距離ということです。
パソコンはOKでもスマートフォンを25cmの距離で長時間見続けるにはかなり眼に負荷がかかっていることがわかります。
『明視域』というワードは眼科医療業界でも一般的に使用されていますが、明視域の領域でも眼の調節力に負荷をかけずに、楽に見ることのできる距離を示すワードがなく、一部の眼鏡専門学校では「1/2調節法」などと表現されているようです。

日本眼鏡技術者協会が眼鏡技術者向けに発行された『眼鏡学教本』では、この調節力の半分を使ってピントの合う距離から遠点までを『実用調節明視域』と定義づけられています。
メガネはただ見えるだけでなく、見たい距離に楽にピントが合っているかが重要です。
当店ではこの『実用調節明視域』を数値化し、お客さまのライフスタイルに合わせた、調節力に負荷のかからない、快適で最適な楽にピントの合う度数を提案させていただいております。
【年齢別の調節力と正視眼の明視域】

こちらは年齢別の調節力と正視眼の明視域をグラフ化したものです。
オランダの眼科医、フランシスコ・コルネリス・ドンダースが19世紀にまとめた「年齢と調節力(ジオプター)の基準」は「ドンダースの表」として知られています。

石原式色覚表を考案したことで有名な石原先生のデータ「石原調節力曲線」では、45歳以降の調節力はドンダーズのものよりも低いデータとなっていて、当店の2000例を超える検査データを分析すると石原先生のデータに近いように感じます。
デジタルデバイスが普及して、近距離を見続けることが増えた現代における調節力の低下は、19世紀の頃とは変わってきているようです。



