正しく見るために

若い世代の眼精疲労と低矯正の問題点

2026.05.19

 

 

屈折検査は問診から予備検査を経て、自覚屈折検査で完全矯正値を測定します。

 

完全矯正値とは、眼の屈折状態が正視眼となる度数であり、近視の場合は最高視力の得られる最弱度数、遠視の場合は最高視力の得られる最強度数です。

 

その完全矯正値から実際に眼鏡として作製する度数を決定するのですが、完全矯正値とするのか、低矯正で処方するのか、まずはそこが快適に掛けれる眼鏡か否かに大きく関わってきます。

 

ここで重要なのはどういった距離を楽に見たいかということです。

 

調節力と装用する眼鏡の度数により、ピントの合う奥行き(明視域)が変化します。

 

現代のデジタルデバイスの普及と視生活環境の変化により、人々の『見る距離』は劇的に変化し、『近くが楽に見えるメガネ』を推奨する眼鏡店も増えてきました。

 

当店でも以前に、調節力が低下してくる40歳以降の方へ向けて、低矯正を勧めるコラムも書かせていただきました。

 

調節力の低下により近方視に負荷がかかる年齢になってくると、こういった明視域が目的距離に無理なく合っているかが重要となりますが、今回のコラムは『調節力が十分にある若い方の眼精疲労』への度数処方の基本についてお話ししたいと思います。

 

調節力が十分にある若いお客さま(調節力5.00D以上ある30歳代前半)が眼精疲労を訴えて来店されるケースでは、検査をすると眼位異常・輻輳不全・開散不全など、両眼視に原因があるお客さまが多くいらっしゃいます。

 

眼位とは両眼の視線の向きがどのような状態かということで、『正位・斜位・斜視』に分けられます。

 

斜視は両眼の視線が別々の方向を向いていて両眼視ができない状態です。斜位は両眼視はできているものの、片眼を遮蔽すると遮蔽された眼球が外を向いていれば『外斜位』、内を向いていれば『内斜位』と言います。

 

片眼を遮蔽した状態でも両眼がまっすぐ向いてる状態が『正位』ですが、正位の人は少なく、多くは斜位の人がほとんどです。

 

斜位の人がどうして両眼視ができるのかというと、外斜位の場合は輻輳力(眼球を寄せる力)、内斜位の場合は開散力(眼球を開く力)でコントロールしているのです。

 

しかし、例えば外斜位が大きく輻輳力が弱い方だと、疲れやすかったり、疲れてくると物が一瞬ふたつに見えたり(複視)ということもあります。

 

さらに、眼球には驚きのメカニズムがあります。本来近くを見るためには眼球を寄せる必要性があり、水晶体が近くを見るための調節を働かせると同時に両眼が輻輳するのです。これは『調節性輻輳』と呼ばれ、ある一定の調節力を使ったときにどれくらい輻輳するのかも人によって違います。(両眼視機能検査AC/Aで表します)

 

話が戻りますが、『調節力が十分にある若い方の眼精疲労』という中で、『外斜位が大きく輻輳力が弱い方』の場合、眼精疲労があるからといって調節力が十分にあるのに低矯正のメガネを掛けると、近くを見るのに調節力を働かせなくても近くにピントが合いますが、その反面、調節性輻輳が効かず、自身で輻輳をより強めないといけないので疲れる原因に。

 

この場合は十分にある調節力を使わせることで調節性輻輳が働かせ、近くに視線が合わせやすく、疲れにくくなるということになります。

 

次に『内斜位』の場合について。

 

どんな人でも眼を寄せる(輻輳)よりも眼を開く(開散)の方が苦手です。

 

内斜位の方で調節力を十分に持って若い方がデスクワーク主体の視生活となると、遠くがよく見えるメガネでは近くを見るのに調節力を働かせなくてはならず、そこに調節性輻輳が働きます。

 

頑張って開散しようとしているところに調節力を使うことで調節性輻輳が働き、その分さらに開散しなければいけないことになり、疲れる要因となります。

 

この場合は調節力を使わせないことで、調節性輻輳を弱め、近くに視線が合わせやすく、疲れにくくなるということになります。

 

『近くが楽に見えるメガネ』として低矯正だけを推奨するのは不十分で、眼位と両眼視機能も併せて検証することが重要です。

 

少し難しいコラムとなりましたが、当店では屈折検査に加え、必要により両眼視機能検査で眼位・輻輳力・開散力も測定し、お客さまに最適で快適な眼鏡を提案しております。眼精疲労(疲れ目)、時々ものがふたつに見えるという方もご相談ください。