正しく見るために

遠近両用レンズで失敗しないために

2023.10.31

 

 

先日ご来店されたお客さまのお困りごと。

 

『1ヶ月ほど前に眼科で遠近両用メガネの処方箋をいただき、近所のメガネ屋さん(量販店)で、初めての遠近両用のメガネを新調したのですが、出来上がって掛けてみると少し掛けただけで気持ち悪くなって掛けれない…』といった相談でした。

 

もう少し詳しく話を伺うと、普段はコンタクトレンズを使用していて、その日もコンタクトレンズを装用した状態で眼鏡店へ行ったところ、その眼鏡店では遠近両用のテストレンズで装用感などを試すことも勧められなかったとのこと。

 

 

遠近両用レンズは累進多焦点レンズとも呼ばれ、各メーカーやグレードで『見え心地や視野の広さ、揺れ歪み』が違います。

今回のコラムでは、遠近両用レンズを試したけど失敗したという方やこれから遠近両用レンズを試したいという方に、知っていただきたいポイントをご紹介いたします。

 

 

 

 

 

『遠近両用レンズの構造と仕組み』

 

 

遠近両用レンズは正面視した時の瞳孔の位置に遠方が見える度数が入っていて、そこから下に視線を移すと、中間距離用の度数、さらに視線を下方視すると手元が見える度数に徐々に変化しています。

 

1枚のレンズで度数を変化させているので、側方部は揺れや歪みを感じることがあり、初めての遠近両用レンズで違和感を感じる原因のひとつです。

 

揺れや歪みの違和感を軽減するポイントについて次にご紹介しますので引き続きお読みください。

 

メガネ 遠近両用 累進レンズ 多焦点 世田谷 自由が丘

 

 

 

 

 

 

『加入度数とレンズのグレード』

 

 

『加入度数』とは、遠くを見るための度数と近くを見るための度数の度数差を言います。

 

『遠用度数』と『近用度数』の度数の差が『加入度数』であり、加入度数が大きくなればなるほど、中間距離や近距離の視野が狭くなり、揺れや歪みが大きくなります。

 

 

 

メガネ 遠近両用 累進レンズ 多焦点 世田谷 自由が丘

 

 

遠近両用レンズにはスタンダード設計やミドルグレード設計から、ハイグレード設計まで、設計のグレードがあり、ハイグレードレンズほど、揺れや歪みが軽減し視野が広がります。

 

 

 

 

メガネ 遠近両用 累進レンズ 多焦点 世田谷 自由が丘 

ニコン・エシロールのスタンダードタイプとハイグレードタイプのテストレンズ

 

 

メガネ 遠近両用 累進レンズ 多焦点 世田谷 自由が丘 

HOYAのスタンダードタイプとハイグレードタイプのテストレンズ

 

 

 

 

 

 『累進帯の長さ』

 

 

そして意外と知られてないのが『累進帯』

 

正面視した時の瞳孔の位置に、遠くを見るための光学中心を合わせて眼鏡は作られるのですが、その『遠くを見るための光学中心』の位置を『遠用アイポイント』と言います。また、遠近両用レンズは視線を下げていくと近距離にピントが合う度数に変化していきますが、最も近距離にピントが合うポイントを『近用アイポイント』と言います。

 

『累進帯』とは『遠用アイポイント』から『近用アイポイント』までの距離(長さ)です。

 

メーカーやレンズの種類によってその累進帯の長さは『10mm・12mm・14mm』や『11mm・14mm』などから選べます。

 

気になるのは『累進帯の長さは長い方がいいの?短い方がいいの?』ということですが、下の画像にあるように、累進帯の長さには一長一短があります。

 

例えば同じ加入度数だと、度数の変化量は同じですが、累進帯の短い設計では急激に変化し、累進帯の長い設計では緩やかに変化するイメージです。

 

 

『累進帯が短い』

 

メリット

・目線を大きく下げなくても近くが見える

・上下幅の短いフレームでも製作可能

 

デメリット

・揺れや歪みが多少大きくなる

・中間距離の視野がやや狭くなる

 

 

『累進帯が長い』

 

メリット

・揺れや歪みが少ない

・中間距離の視野が広い

 

デメリット

・近くを見るときに大きく目線を下げる必要性

・上下幅のあるフレームが必要

 

 

メガネ 遠近両用 累進レンズ 多焦点 世田谷 自由が丘

 

 

メガネ 遠近両用 累進レンズ 多焦点 世田谷 自由が丘 

手前はHOYA複合累進テストレンズ(累進帯11mmと14mm)

奥がニコンセンチュリーAiのテストレンズ(累進帯12mmと14mm)

 

 

 

 

 

 

『度数』

 

 

もっとも重要なのが処方度数。

 

遠近両用レンズの場合、先ほど記述した加入度数により、距離や近距離の視野が狭くなり、揺れや歪みが大きく違ってきます。

 

遠用度数が過矯正になってしまっていたり、近用度数が必要のないほど近距離に合わせてしまっていると、加入度数もその分大きくなります。

 

特に50歳を過ぎてからの初めての遠近両用レンズでは、遠くから近くまでバッチリ見たいと欲張りになると、大きな加入度数になり、慣れるのに相当な覚悟が必要に…。

 

そのような方も、遠くの見え方を少し弱くするか、近くの見え方を少し弱くするとなれば、加入度数を抑えられ、慣れやすい度数にすることも可能です。

 

最初は遠くか近くの見え方を少し譲歩しながら遠近両用に慣れていただき、そのレンズに慣れて違和感がなくなったタイミングで、度数をよりきちんと見える度数にステップアップしていくというのも一つの方法です。

 

 

 

 遠近両用レンズで失敗しないために

 

 

 

当店では遠近両用レンズを処方させていただく際には、メーカーごとの設計の違いや、グレードによる違い、累進帯の長さによる違いなどを、テストレンズで実際に比較いただき、揺れ歪みや装用感、見え心地、視野の広さなどを体感いただいた上で、レンズのメーカーやグレードなどをお選びいただいております。

 

 

以前に遠近両用レンズ(累進多焦点レンズ)で失敗した方、試してみたいという方もお気軽にご相談ください。

 

 

 

 

メガネ 遠近両用 累進レンズ 多焦点 世田谷 自由が丘 

メーカーやグレードの違うテストレンズで時間をかけて装用感を比較いただきます。

 

 

 

 

関連コラムとして、遠近両用レンズのメリットを理論的に数値も含めて解説したコラム『遠近両用レンズをオススメする理由』と、遠近両用レンズのデメリットと遠近両用レンズも使用する場面やシチュエーションによっては万能ではないというコラム『50歳からの快適なパソコンライフ』も下記リンクから是非ご覧ください。